高齢ドライバーの事故は増えている?データに基づいて考えてみた!
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高齢ドライバーの事故は増えている?データに基づいて考えてみた!
今年4月19日昼、東京・池袋で最悪の交通事故が発生しました。
87歳の男性が運転する乗用車が暴走し、次々と歩行者をはねた上に、ゴミ収集車に激突しました。
通りすがりの母子が亡くなり、「高齢者による自動車の運転」が社会問題になり、再び注目されるようになったのです。
この事故以外でも、数年前から、高速道路の逆走や高齢ドライバーによる事故のニュースが頻繁に目にするようになりました。
この記事では、高齢ドライバーの事故について、ご紹介します。
高齢ドライバーの定義とは?
「高齢ドライバー」といっても、実は、その定義づけはさまざまです。
「高齢者」とは
・警視庁の交通事故統計では「65歳以上」
・厚生労働省の各種統計では「65歳以上」
・警察庁の統計データでは「75歳以上」
・高齢者運転標識(もみじマーク)は「70歳以上」のドライバーの努力義務
・免許更新時の認知機能検査は「75歳以上」のドライバーが受ける
高齢ドライバーの85歳以上の免許保有者は60万人?
昨年末の時点では、運転免許を持っている人は8225万5195人。
このうち、65歳以上が1818万3894人で全体の22.1%を占め、免許を持つ5人に1人以上が65歳以上となります。
75歳以上では539万5312人(全体の6.6%)が保有し、そのうち85歳以上は59万164人(全体の0.7%)を占めます。
この0.7%を高いと見るか低いと見るかですが、車100台の内1台近くは85歳以上が運転している、と考えると恐ろしい気がします。
全国平均の数字なので、地方によりさらにこの割合は増え、100台に2台、5台と増えることでしょう。
高齢ドライバーの交通事故事例とは?
高齢ドライバーの交通事故でよくあるのが以下のような事故です。
・高速道路の逆走
・アクセルとブレーキの踏み間違い
・ハンドル操作やブレーキ操作の遅れ
・前方確認が不足していたなどの注意不足
このような事故が増える原因は、年齢を重ねると「動体視力」「聴力」「複数の情報を同時に処理」「瞬時に判断して行動に移す」などのような「身体機能」が少しずつ衰えてくるためです。
また、身体機能のみならず、加齢に伴う「認知機能」の低下も懸念の1つです。
平成28年には、認知機能検査を受けた高齢者、約166万人のうち、約5.1万人は認知機能が低下しているというデータが出ています。
2018年(平成30年)の高齢ドライバーの事故は過去最高?
交通事故の死者の件数は減少していますが、その中で、高齢者による割合が増えています。
高齢化が一段と進む中で、対策が求められています。
警視庁のまとめによると、2018年(平成30年)に発生したバイクや車による死亡事故のうち、75歳以上の高齢ドライバーの過失が最も重い「第一当事者」となった事故は、前年より42件増えて460件でした。
これは、全体の14.8%を占め、過去最高の割合となりました。
※「第一当事者」とは、過失大の直接事故の原因を作った当事者のことです。
では、2009年(平成21年)~2018年(平成30年)までの10年間の高齢運転者(第一当事者)の交通発生状況(平成30年中)をグラフ・表で見ていきましょう。
高齢運転者(第一当事者)の交通発生状況(平成30年中)
- 年推移
上段:高齢運転者(第一当事者)交通発生件数
下段:事故全体に占める高齢運転者の事故割合(%)
21年 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 | 26年 | 27年 | 28年 | 29年 | 30年 |
6,883 | 6,979 | 6,923 | 6,600 | 6,341 | 6,033 | 5,806 | 5,703 | 5,876 | 5,860 |
12.2 | 12.7 | 13.4 | 13.9 | 15.1 | 16.2 | 16.9 | 17.6 | 17.9 | 18.0 |
引用先:警視庁交通課統計
・高齢運転者とは、原付以上(特殊車を含む。)を運転している65歳以上の者をいいます。
・高齢運転者の交通事故発生件数は、第一当事者となった件数です。
・構成比の数値は四捨五入しているため、内訳の合計が100%にならないことがあります。
都内における高齢運転者が第一当事者となる交通事故発生件数は10年前に比べ減少していますが、高齢運転者による事故の割合は年々増加傾向にあります。
まとめ
いかがでしたか。
ここまで、高齢ドライバーの定義、85歳以上の免許保有者、高齢ドライバーの事故事例、高齢運転者の事故発生件数などをご紹介しました。
「高齢ドライバーが起こした交通事故」のニュースは、起こすと、毎日のように扱われます。
高齢化が進む現代社会において、「高齢ドライバーの事故」について考えるのはもちろん大切なことですが、高齢ドライバーが起こす死亡事故が急増していることだけが強調され、免許返納や認知機能検査などの重要性も指摘されています。
しかし、大々的なニュースやそれに基づいて形成されたイメージばかりにとらわれて、声高に「免許を返納しろ」と叫ぶばかりでは、何も解決しません。
今、対策が急務なときだからこそ、イメージだけでなく、データに基づいて、冷静な議論を進めていくことが必要です。
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